
概要
実験映画、ビデオアート、メディア芸術分野の草分け的存在である飯村隆彦(1937年-2022年)が残した芸術活動に関する写真資料や紙媒体のデジタル化及びアーカイヴ作業を行う。当該事業はこれまで、飯村のビデオテープ作品(各種テープ媒体収録)のデジタル化とフィルム作品の所在と状態確認の作業を行ってきた。今年度は、次に緊急性が求められる16mmフィルム作品のデジタル化を開始するとともに、作者が制作段階や作品発表時に作成したスケッチ・図面、記録写真・広報媒体・書簡などの紙媒体をアーカイヴ化し、国内のメディア芸術黎明期といえる1960年代~1980年代の貴重な資料を後世に伝える一助を担いたいと考える。
作業工程
飯村隆彦のスタジオに保管されていた活動年ごとのファイルから写真、チラシ、ポスター、直筆のスコア、スケッチ、作品発表時の契約や書簡を一枚ずつ光学スキャナーで読み取り、リストを作成した上で、 将来的な再現展の指示書や作品分析に役立つ一時文献としてリスト化した。16㎜フィルム作品は光学スキャンを行い、4K相当の画質のデジタル動画にダビングを行った。経年によるダメージ・褪色については修復を施した。


資料(上左・上中)とスキャニング作業の様子(上右)
デジタル化した資料の例(左)アンダーグラウンド映画シーンに関する
飯村の記事(1968 年のカナダの新聞記事)[ 左] フィルム映写機を使ったインスタレーション展示作品
《Loop Seen as a Line》(1972)の設置図[中]
飯村が生前に遺したカセットテープ記録のテレシ ネを参考に、複数の上映版があることが判明し、今回はフィルムをフレーム単位の光学撮影を行ない4K 画質のデジタル版の動画を作成した。解像度があがり、ディティールが見えるとともに、フィルム自体のダメージを修復し、経年による褪色をデジタル処理で修復した。

成果・公開方法
本事業を通じて飯村のメディア芸術作品を公開することができた例にCommunity of Images: Japanese Moving Image Artists in the US, 1960s-1970s展に飯村隆彦関連作品数本(アメリカ合衆国・フィラデル フィア、フィラデルフィア日米協会、コラボラティヴ・カタロギング・ジャパン主催、令和6年6月14日~8月9 日)、鈴木治行「映像と音楽」室内楽個展に飯村作品「Filmstrips II」の上映(杉並公会堂小ホール、主催CIRCUIT、令和6年10月22日)があった。また引き続き当サイトを通じて、情報公開に努め、戦後美術やメディア芸術の理解と分析に役立てたいと考える。
令和6年度アーカイブ作業・作品リスト
2024年10月22日(火)19:00 場所:杉並公会堂 小ホール
飯村隆彦と交流のあった作曲家、鈴木治行氏による室内楽個展。2011年にサントリー・サマーフェスティバルで初演となった飯村作品「FilmstripsII」(オリジナルは1966-70年)の「生演奏版」の再演となります。
Japanese Moving Image Artists in the US, 1960s-1970s
June 14- August 9 2024, Philadelphia Art Alliance of the University of the Arts
curated by Collaborative Cataloging Japan (CCJ)
フィラデルフィアにて飯村隆彦ほか邦人作家の1960年代‐1970年代の映画・ヴィデオのアートの紹介展開催。
事業コアメンバー:瀧健太郎、前田梨那、前田博雅
協力:南オーディオ・ヴィジュアル、東京都写真美術館
助成:令和6年度メディア芸術アーカイブ推進支援事業(文化庁)