概要
実験映画、ヴィデオアート、メディアアート分野の草分け的存在である飯村隆彦(1937-2022)のヴィデオテープ作品のデジタル化及びアーカイヴ作業を行う。ユネスコが警鐘を鳴らすように、Uマチックとβカム方式など初期の磁気カセットテープのデジタル化が急がれる。本事業では飯村隆彦の作品が収録されているカセットテープをデジタルデータに変換し、リスト化を行った上で修復を施し、国内のメディアアートの貴重な資料としてアーカイヴ化を試みる。
飯村 隆彦 Takahiko Iimura (1937-2022)
哲学や思想的なアプローチからフィルムやヴィデオ、パフォーマンスを行い、戦後のアート史と映画史の交点ともいえる新しい表現分野を開拓した。国内のみならずアメリカ合衆国、フランス、ドイツなど国際的に活動が知られる。著書に『芸術と非芸術の間』(三一書房、1970)、『パリ東京映画日記』(風の薔薇社、 1985)、『映像実験のために』(青土社、 1986)、『映像アートの原点 1960年代』(水声社、2016)など。第19回文化庁メディア芸術祭(2015年)の功労賞を受賞。
作業工程
飯村隆彦のテープ作品約500本を対象に、テープ切断、カビなどにはテープそのものの物理的な修復を施し、再生可能にする。アナログテープからデジタルデータへの変換を行い、その後修復作業として画質と音質の保存の良いものを選定し、上映用のマスター動画データを作成。デジタル化したデータは複数のハードディスクに動画形式を変えた上で保管する。またその成果物としてリストを作成し、初期の飯村のテープ作品の展示・上映を行う。
・テープ切れにより再生不可能なものは、切断部分を接合し再生できるように。(左上)
・テープ内のカビが著しいものは、をテープふき取り、再生時に機材や他のテープへのカビ付着を抑えた。(上)
・複数のフッテージを比較し、画質・音質の良いものを選出し、ベスト・コンディション版としてアーカイヴした。(左)
成果・公開方法
完成した修復版の映像作品を含めた、未公開作品や完全版の作品の一般公開を行っています。これまでドイツの国際映画祭での特集展示(令和5年2月)、京都のアートギャラリーでの展示(令和5年3月)を行いました。アーカイヴ化された作品一覧をレゾネ・カタログとしての印刷物と、WEB上でのリスト公開(下)の両方で閲覧可能となっております。令和5年分のアーカイヴ作業については、下記をご参照ください。(随時更新中)
令和5年度アーカイブ作業・作品リスト
令和4年度アーカイブ作業・作品リスト
飯村 隆彦 ヴィデオ・フィールド Takahiko IIMURA Video Field
2023年3月4日ー26日
MORI YU Gallery (京都)で開催される飯村隆彦の回顧展にて、当該アーカイヴ事業より展示用動画を提供します。
2023年2月16日ー26日
映画とヴィデオのインスティテューションArsenalによるForum Expanded 2023にて、1970年代に同祭で発表された飯村隆彦のインスタレーション展示の再現が行われます。当該アーカイヴ準備室より4作品のデジタル化された飯村作品を提供しました。
恵比寿映像祭2023 東京都写真美術館2023年2月3日ー19日
飯村隆彦特集の上映は2月4日・7日・15日
写真美術館に寄贈されたフィルム作品とVCTビデオアートセンター東京がデジタル・アーカイヴ化したヴィデオ作品から上映されます。
Yasunao Tone: Region of Paramedia
January 13 – March 18 2023 at Artists Space, N.Y.
ニューヨークのアーティスツ・スペースで開催される刀根康尚の展覧会関連企画で上映される刀根作品《2,880K=120” 》を当該アーカイヴ作業から提供しました。
飯村隆彦 ヴィデオ・フィールド ヴィデオテープ作品総目録
A4 、 36P、 カラー / 2023 年 3 月出版
価格 1,650 円(税込)
飯村隆彦のヴィデオテープ作品を中心に纏めたカタログ・レゾネが出版されました。 アーカイヴ・プロジェクトによって詳細が明らかになった、飯村が1970年から制作をつづけたヴィデオアート60作品を掲載。 河合政之、瀧健太郎、森裕一 (MORI YU GALLERY) による寄稿を収録。 MORIYU GALLERY、本サイトにて販売中。
事業コアメンバー:瀧健太郎、服部かつゆき、吉田亮子、大江直哉
スタッフ: 前田梨那、前田博雅、青山武生、酒井風
サポートメンバー: 河合政之、西山修平、浜崎亮太、韓成南
助成:令和5年度メディア芸術アーカイブ推進支援事業(文化庁)
令和4年度メディア芸術アーカイブ推進支援事業(文化庁)